最終更新日時 : 2015年09月15日
ここ数回で運転資金の種類についてお話ししてきました。最終回の今回は「赤字補填資金」についてお話しします。経済情勢が厳しい今では、中小企業の多くの融資申込理由は、この「赤字補填」にあると思われます。
「赤字補填」?と聞くと、皆さん引いてしまうと思います。しかし、それは皆さんが自身の会社の内容を理解していないことが多いのかもしれません。この運転資金の中身についても、知識としてもっておくと、金融機関がどのように考えているのかが少し分かってくると思います。
「赤字補填」とは、まさに言葉の意味の通りです。本業が赤字である時に発生してくるもので、本来であれば本業の利益で資金繰も円滑に回るものが回らなくなっている状態の時に、資金繰りを繋ぐために借りる性格のものを言います。
「赤字」とはいっても内容で分けると2種類あります。
それは「過去の赤字」と「現在の赤字」です。
「過去の赤字」とは例えば、売掛債権が焦げ付いてしまって回収不能になり、その資金がショートしてしまったものや、有価証券や子会社に投資・出資をしたが、回 収ができていないがあります。また、設備投資をしたものの、当初の予定より受注が少なく投資分の回収ができていないものも要因のひとつに挙げられます。
「過去に発生した赤字」を埋めるために企業はリストラを行ったり、回収サイトや支払サイトの調整を考えたりしますが、多くは「借入」でこのギャップを埋めています。これが過去の「赤字補填借入」になります。
「現在の赤字」とは、直近で発生した本業の赤字で資金繰りが多忙になり、銀行借入の返済原資もきつくなってくることを指します。さきほどの「過去の赤字」を埋 めるために借入した借入返済もきつくなってくることから、「現在の赤字」を埋めるためにも借入を増加させることになります。この赤字が累積していくこと で、結果として借入金額が増加し、毎月の借入返済額が増加していく悪循環に陥ってしまうのです。
金融機関が「赤字補填資金」であると分かるにはふたつのアプローチから検証します。
まずは、決算書の資産の部にある資産が簿価通りの価値があるかどうかです。簿価通りの価値がないとすれば、その資産の目減り分を何らかの形で埋めなければなりません。この何らかの形が多くは「借入」で埋めているのです。
次に、資金繰りからのアプローチになりますが、本業の資金繰りの利益(経常収支)がプラスでなければ、資金繰り上でも本業は赤字となります。経常収支が赤字になれば、銀行返済の継続も厳しくなり、それを埋めるために借入を増加させてしまうことになるのです。
借入の資金使途が「赤字補填」だと分かれば、まずプロパーでの融資の検討は難しいでしょう。少しでもリスクを軽減化させるために保証協会保証がついた融資を考えるはずです。
ただ、責任共有制度により、プロパーでも20%が金融機関の負担になることから、慎重な審査になるはずです。また取り上げるにしても20%分のリスクを少しでも下げるために、金利の引き上げや追加保全の要求が予想されます。
このように、「運転資金」と一言で表すといっても、幾恵もの解釈があり、その中身によっては融資スタンスも大きく変わってきます。皆さんが融資を申し込む際 に、どの資金使途に当たるのかを事前に自己分析することで、金融機関の対応がある程度予測できます。その予測のもとに自社がどのような対応をしていくのか をシミュレーションしておくことが重要になってくるのです。